エターナル・サンシャイン ネタバレあり感想&映画脚本分析

エターナル・サンシャイン
上映時間 107分

監督:ミシェル・ゴンドリー
脚本:チャーリー・カウフマン

ジョエル・バリッシュ (ジム・キャリー)
クレメンタイン・クルシェンスキー (ケイト・ウィンスレット)
パトリック (イライジャ・ウッド)
メアリー (キルスティン・ダンスト)
スタン (マーク・ラファロ)
ハワード・ミュージワック博士 (トム・ウィルキンソン)

ログラインは、主人公のジョエルは、ケンカ中の恋人クレメンタインと仲直りしようとプレゼントを持って訪れたが、彼女はすでに記憶除去手術をおこなって彼のことを忘れていると知り、彼も同じ手術をして彼女を忘れようとするのだが……という話。

2004年アカデミー脚本賞に輝いた作品。
脚本家のチャーリー・カウフマンは、『マルコビッチの穴』を見ればわかりますが、天才です!
発想力、アイデア力で突き抜けている。
この映画の原題『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』は、イギリス詩人アレクサンダー・ポープの書簡詩から引用されている。その詩は、ロミオとジュリエットのような悲恋で、互いに引き裂かれた二人が愛し続けて書簡を交わしていたというもの。
その話の人形劇を『マルコビッチの穴』の主人公が冒頭でやっているのだそうだ。

エターナルサンシャインは、とても高度な脚本です。
日本人の脚本家でこういったものを書ける人はいるのでしょうか?
そもそも読める人がいるのかも謎ですが、研究してみましょう。

エターナル・サンシャイン eternal sunshine

<鑑賞済みの方を対象にネタバレありで語っていきますので、見ていない方はご覧になってからがいいかと思います>

作品の発想のもと

ミッシェル・ゴンドリー監督によると、
「友達の芸術家、ピエール・ビスマスと食事していたら、彼がガールフレンドのことが嫌で、彼女の記憶を一切消したいと言い出したんだ。そこから、記憶を消去してくれる会社の話を思いついた。それを映画にしたいと言うと、みんなすぐにSFサスペンス・アクションにしようとした。『トータルリコール』みたいにね。けれど、チャーリー・カウフマンは男女の恋愛話にしようと言ってくれた。それから2人で脳と記憶の仕組みについて研究してシナリオを書き始めた」

「ハリウッド映画は男女が互いに愛を告白したらそこでハッピーエンドになってしまう。でも、現実の恋愛はそこから始まる。脚本を書いていると思わずハリウッドの紋切り型に引きずられてしまうけど、僕はそんなウソを描くことはできない。『めでたしめでたし』で映画館を出たら忘れてしまう映画にはしたくない。この映画がハッピーエンドなのかどうか、それを決めるのは観客だ。映画館を出た後、話し合って欲しい」

何気ない友人の一言が発想のもとになる。
アイデアは目の前に転がっている。けれどそれをどう掴むかは、その人次第。
しかし、記憶喪失や記憶除去を扱った作品はけっこうある。
記憶トラブルは、ネタにしやすく、作品が似通ってしまうのが難点。
そこを突き抜けることができたのが、チャーリー・カウフマンということなのだろう。
掴んだアイデアをどう発展させるかは、脚本家の力量とそれを受け入れることができる監督やプロデューサーが必要になる。
そのどちらもが日本には欠けているのかもしれない。
しかし、こういう映画を好きだと絶賛する観客は大勢いる。その現実をそろそろ制作陣は受け止めるべきだと思う。

構成が高度

脚本にカウフマンでも3年かかっているらしいです。
で、なんかよくわからなかったという人は、時間軸のズレがややこしくしてるのかもしれません。

そこで注目するのは、クレメンタインの髪の色。
緑→赤→オレンジ→青
と彼女は変えていきます。

緑が、ジョエルと初めて出会ったときの色。
赤が、初デート〜熱愛中の色。
オレンジが、恋愛後期の色。
青が、ジョエルとの記憶を除去した後に変えた色。

そして、混乱させるのが、ジョエルの車の傷と日記です。
車がボコボコになっていたのは、クレメンタインが飲酒運転をしてぶつけたから。
冒頭のシーンはその後ということになる。
でもジョエルは記憶が消されているので、隣の車がぶつけたと思い込む。

またジョエルの日記も混乱を生む。
クレメンタインの前に付き合っていたナオミの日記は残っていたので、彼はその失恋?で気が晴れないと思っていた。
しかし日記の一部が破かれている。なんでだろうなと、日記を書き込んでいたところ、クレメンタインとモントークで出会う。
破かれている箇所は、前に彼女と付き合っていた時につけた日記の部分。記憶が消されたため、自分が破ったことも忘れていたということになる。

エターナル・サンシャイン

この作品を理解するためにパートで分けると、
オープニング〜約17分をA。
17分〜22分をB。
22分〜32分をC。
32分〜92分をD。
92分〜ラストをE。
に分けられる。
時系列は、C→B→D→A→Eとなる。
(C)ジョエルがクレメンタインと仲直りしようとしたが、彼女はすでに彼から記憶を除去したと知る。そして自分も記憶除去すると申し出る。
(B)自宅で記憶除去手術のため薬を飲んでぶっ倒れる。
(D)記憶除去手術をする現実世界とジョエルの脳内世界が交互に語られ、ジョエルの記憶除去が終了するまで。
(A)ジョエルが記憶除去後、モントークで、同じく記憶除去後のクレメンタインと再会、2日目の夜に氷上のデートを楽しんで車で戻った翌朝、パトリックが車をノックする。
(E)2日目の朝、2人がジョエルの家へ向かう道中でケンカ別れ。だがもう一度惹かれあう。

特に、Dがこの映画の肝。
ここが楽しめないと、なんのことかわかりませんよね。
Dの記憶除去手術をする現実世界には、パトリック、スタン、メアリー、ハワード先生のストーリーがある。
非モテ男のパトリックは、ジョエルの記憶と思い出をパクり、あらかじめクレメンタインの好きなことやものを心得てインチキをして口説き落とした。だが、クレメンタインは本能的に”彼は違う!”と気づく。
スタンとメアリーは、ジョエルの記憶除去手術中に酔っ払ってイチャイチャして寝ちゃう。その間にトラブルが起き、ハワード先生を呼ぶ事態になる。すると、メアリーがハワード先生に夢中だとわかる。だが彼女は彼ともともと不倫をしていて、記憶除去手術済みとわかる。

そして、もうひとつの世界が、ジョエルの脳内世界。
彼は、自分の脳の中で消されていく記憶を見ている。
厄介なのが、現実世界で起きている声も聞こえる。このせいで、彼はパトリックが自分からクレメンタインを奪ったと知る。さらに、クレメンタインとの忘れたくない記憶もあって、目を覚ましたいと訴えるがこちらの声は届かない。その上、スタンとメアリーはよろしくやってる。
その間にジョエルは、脳内にある、忘れたくない記憶のクレメンタインと一緒に、記憶を除去されることから逃れようとする。※ここが最高に面白いアイデア!難易度が上がっていくのも見どころ。

方法は、クレメンタインが現れる記憶(記憶図)に沿って消しているので、彼女が一度も現れたことがない記憶に逃げ込むこと。そして記憶の改ざんもする。
目を覚ましたスタンは慌てる。「記憶図に彼がいない! 記憶が生焼けじゃないか!」
自動消去できていないトラブルに気づいて、ハワード先生を呼ぶ。
ハワード先生は、逃げる彼らを見つけようとする。※ここが二人の愛の障害となる演出になる。彼らの仲を引き裂こうとする敵がハワード先生だ。ただし、ジョエルの脳内の話。現実ではない。
彼らはもっともっと逃げなきゃいけない。
その時のクレメンタインのセリフがいい。
「もっと記憶の底に私を隠して!」
そして、ジョエルの思い出したくない恥ずかしい記憶の底まで二人で逃げる。
だが、見つけられ、どんどん記憶は消されていくと、クレメンタインは彼に、「付き合いたきゃ、私だけの男でいて」という。
「君に消されてもずっと愛していた」とジョエル。
「私を覚えてて。お願いよ。あなたならできるから。信じてるから」と彼女は目の前から除去されてしまった。

ついに、残る記憶は彼女との一番古い記憶。出会いの記憶だ。
彼らはこんな会話を交わす。あくまでジョエルの脳内!
「この記憶ももうじき消えるわよ」とクレメンタイン。
それに、「楽しもうよ」とジョエルは答える。内向的な彼らしくない発言。
彼の変化の兆しが見えた。だが、じきに記憶が消されると思うと切ない!
そして、記憶とは違うことを二人はする。
ジョエルは不法侵入した家で楽しんでいたが、急に怖くなって逃げてしまったという記憶がある。しかし、「さよならくらい言ったことにしようよ」とクレメンタインが提案すると、彼は戻ってくる。
彼女は彼の耳元で、「モントークで会いましょ」と伝え、記憶がすべて除去された。

Dパート最高過ぎです。
しかも、現実世界でハワード先生とメアリーはまた惹かれ合うということも見せている。
これは、Aパートで再会するジョエルとクレメンタインとも同じように、相手が嫌だから、あの恋が辛いからという理由だけで、相手の思い出など存在自体の記憶を消しても、結局相手を本能的に欲してしまうのが恋なのではないか、と言いたいのだと思う。
ハリウッド的には、そこでやっぱり恋は素敵だねで終わらせたいのを、さすがカウフマンはしない。
Eパートで、互いに記憶除去手術をしていたと分かった上で、どういう結論にするのかと突きつける。ここがよくできている。

愛しているけれど男女のかみ合わない様子を描いたセリフ

クレメンタイン「無口なの?」
ジョエル「退屈な人生だから。話のネタがない。日記の多くが空白なんだ」
クレメンタイン「空白が悲しいの? それとも不安? 私は何にでも挑戦して1秒でもムダにしたくない」

正反対の考えを持つ二人だとわかる。
それ故に別れてしまった。
けれど、もう一度出会った二人はこんなラストを迎えた。

クレメンタイン「私はイカれた女よ。安らぎに飢えてるの」
ジョエル「嫌う理由がないよ」
クレメンタイン「今にイヤになるわ。そして私は息が詰まるの」
ジョエル「オーケー(それでもいいよ)」
クレメンタイン「……オーケー(そうね)」

ジョエルの変化がわかる。
彼は氷上デートの時に割れるかもしれないと一歩も踏み出せなかった。けれど彼女に手を引かれて歩み、一緒に寝転んで星を見た。
なかなか互いに理解できない、すれ違う二人だけれど、モントークで二人はまた出会い、恋に落ちた。
今度もダメかも知れないけど、もう一度やり直すのもいいんじゃない?
それが愛を育むということであってほしい。
また出会えたんだから、もう一度楽しもう。
OK!
エンディング曲の歌詞のとおり彼は学んだとわかった。

Beck – Everybody’s Got To Learn Sometime

Change your heart
Look around you
Change your heart
It will astound you

気持ちを変えて、振り返ってごらん
気持ちが違えば、世界も変わるから

I need your loving
like the sunshine
And everybody’s got to learn sometime
Everybody’s got to learn sometime
Everybody’s got to learn sometime

君の愛が必要なんだ
太陽の光と同じように
いつかは知らなければ
いつかは気づかなければ
いつかは学ばなければ

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