キューティ・ブロンド ネタバレあり感想&映画脚本分析

キューティ・ブロンド
上映時間 96分

監督:ロバート・ルケティック
脚本:カレン・マックラー・ラッツ,キルステン・スミス

エル・ウッズ (リース・ウィザースプーン)
ヴィヴィアン (セルマ・ブレア)
ワーナー (マシュー・デイビス)
エメット (ルーク・ウィルソン)
キャラハン教授 (ヴィクター・ガーバー)
ストームウェル教授 (ホランド・テイラー)
ブルック (アリ・ラーター)

ログラインは、元カレを追いかけてハーバード大学のロー・スクールに入学した全身ブランドファッションの天然ブロンド娘が、ある殺人事件の訴訟に実習生として関わるうち、弁護士が自分の天職だと気づき、(バカ)男から自立する話。

この映画は、女性に特にオススメです。失恋した女性、仕事を頑張ってる女性、恋愛から遠ざかってる女性みんなが元気になる映画だと思います。
女性脚本家コンビで書いていて、脚本家のカレンは、主人公エルのようにブロンドの女子大生で、ファッションを学び、女子社交クラブに入っていたそうです。なので、細部にリアリティーが宿っていて、共感する女性が多いはずです。
また、脚本も典型的な3幕構成でわかりやすく、脚本初心者の方には必ず観るようオススメしている作品。シナリオコンクールで最終選考以上を目指すなら、これくらい書けるといい。この手のサクセスストーリーが、感覚として「売れるホンだ!」と感じられないとまずいです。
では、どんなところに注目してみるといいのか分析していきたいと思います。

legallyblonde キューティ・ブロンド

<鑑賞済みの方を対象にネタバレありで語っていきますので、見ていない方はご覧になってからがいいかと思います>

女性キャラクターは、共感が大事!!
96分という、わりと短めな映画ですが、90分台の映画は良作が多い。無駄な部分はほとんど削ぎ落とされ、主人公に焦点を絞っているので、ストーリーのテンポがでます。
この映画も、開始4分で、主人公エルの目的が提示される。
<恋人ワーナーにプロポーズされ、イエスと答えること>
これが、彼女にこれから起きるであろう最高な出来事だ。それについて、観客は誰も疑わない。誰だって好きな人と一緒になれることは普遍的な欲求だから。
しかし、その3分半後にフラれてしまう。呆気なく彼女の目的は崩れた。そして、別れる理由が、作品タイトルにある”ブロンド”。
一種のジョークというか、男の妄想というか、『ブロンド=バカ』を信じこんでるバカ男が世の中にはいる。日本でいうところの、『巨乳=バカ』をジョークではなく、本気で信じているバカだ。
それが、恋人のワーナー。彼は、政治家の家系で、「君は(外見が)うちの家系にふさわしくない」と、悪気もない様子でエルをバッサリ振る。

普通の女子ならここで興ざめして、恋から目がさめるのだが、エルはちょっと違う。
セレブにありがちなのだが、結構なポジティブ・シンキングの持ち主。さらに天然ちゃん。ゆえに、ちょっと変わったことを思いつく。
失恋をして1週間、チョコレートをバカ食いしていたところ、キャピキャピした友人が、気分転換をさせようと彼女をネイルへ連れ出す。これは男の脚本家にはなかなか書けないシーン。なんで次の行動がネイルなの?と思うけど、女子ならありえるし、エルならなおさらそれでOKと思わせる。
ネイルの待合室で、ワーナーの兄が妻と結婚に至った馴れ初めを知る。
<同じロースクールで出会い、関係を築き、結婚へ>
エルはひらめく!!!
そっか。ワーナーもこういう女がきっと好きなのよ!彼もハーバード大のロースクールへ行くっていうし、私も同じように行けば、よりを戻せるかも!だって私は学校1の人気者だし、足りないのはこれだけでしょ。行っちゃお、行っちゃお、ハーバード!
一見タイトルイメージ通りのおバカな行動に見せておくのがこの映画のポイント。
見方を変えれば、やりたいと思ったらすぐ行動に移せるところがエルのいいところでもある。
彼女は、正直、素直、まじめ。
ロースクールに行くには、テストを受けなければならない。ならば、大好きなパーティーはお預けにして、勉強に励む。
推薦状を書いて欲しければ、先生に明るく頭を下げる。
ハーバード大へ小論文を提出するところ、彼女は水着姿でビデオメッセージを送る。

それを嫌味なく、エルはこなしていく。
なぜか憎めない。セレブで美人で、人気者なんてキャラは、パリス・ヒルトンのようなもので憎まれキャラのはずなのに、なぜか憎めない。
なぜ憎めないのか?
きっと女子の理想だからです。外見的なことだけではありません。
彼女は、自分を信じている。強く強く信じている。だから彼女は1幕終わりの直前で言い切ります。「私にできないことはない!」
女性も男性も、誰かに好かれたい、モテたいという動機で、若い頃は努力ができるものです。彼女も初めはそうでした。しかしその動機から、彼女はいろんな経験をし、旅をする。それがこのドラマの始まり。

legallyblonde キューティ・ブロンド

そして、バカの象徴になっている彼女のファッションセンス。そのファッション感覚や知識が、後半効いてくる。まさかの伏線になっていたことに観客は気づく。きっと女性なら、エルのように私もこうなりたいと思うのではないだろうか。
脚本家は、ターゲットの女性に寄り添いながら、
『バカな男を支えるなんてそんな古い考えはいい加減捨てて、自分の得意な分野を活かして、自分を信じて、前に進もうよ!そんなあなたを認めてくれる人と一緒になることが、幸せなのよ!」
と、メッセージを送るように書いているはずです。

キャラクターの配置に気を配る!!
女性キャラクターには、良き理解者という人が必ず現れた方がいいです。理解者というのは、主人公の言動に、共感し同調する者です。
女性は生物学的に?脳科学的に?か知りませんが、共感や同調性の生き物なので、本能的にそういう人を求めます。ですから、女性にはそういった方が現れるほうがリアリティなんです。

エルvsヴィヴィアン(ワーナーの婚約者)
エルvsハーバード大生(ファッションから思考から何から違う)
エルvsキャラハン(セクハラ教師、権力者)
エルvsストームウェル(堅物なフェミニスト)

エルは、目立つゆえに、対立は多い。ハーバードでは、今までのLA生活とまったく違う世界で、彼女は人気がなく、疎外される経験をする。
陰湿な意地悪もされるが、そんな彼女を理解する新鋭弁護士エメットの出会いがあり、失恋を共感しあうおばちゃんネイリストとの友情があり、弁護依頼人のブルックの信頼があった。
彼女はそういった自分を理解し、同調し、応援してくれる人を絶対裏切らない。約束は必ず守る。だから人が最後までついてきた。
そんな彼女の努力と成長が、敵対者にも変化を与える。嫌なキャラだったが、嫌なキャラで終わらせないこともできた。コメディーでは、良い人が悪い人へ、悪い人が良い人へという変化をよく使う。感動を与えるなら、悪い人が良い人へという変化を作ればいい。この映画も終盤それを使う。
分かりやすい対立軸に、彼女の頑張りを支える協力者というキャラクターの配置がこの映画はうまかった。

価値観の提示を考える
たとえば男性主人公の場合、女性を追いかけて、女性の信用を取り戻すため、がむしゃらに努力して、仕事で成功し、その女性を迎えに行くというストーリーはよくあると思います。
しかしその逆は、あまり見かけるストーリーではありません。おそらく受けいられにくい価値観だからではないでしょうか。

価値観として、それは多くの人が共感できるものかが重要です。特に女性ターゲットにする場合。
女性は、好きな男性と一緒にいることで幸せを得られると一般的に思われています。実際、きっとそうですが、そうならないのも世の中です。昨今は、未婚女性も多い。その場合、もうひとつの価値観として、仕事に生きる女性だって幸せ!というのもあると思います。というか、現代はそういう方が好まれます。
エルも、政治家を目指す彼を支えて、名家の嫁になることが自分の幸せだと考えていた。けれど、自分の手で、地に足をつけて、幸せを勝ち取っていくこともアリなんだ、ということに気づく。どこかに収まろうとすれば、その人の実力は発揮できないままだったけれど、もし自分を信じて、活かせる分野があるなら、男探しよりそれはもっと重要なことなんじゃないか。その方が、カッコイイんじゃないか。あなたは実力を発揮できているか?今のままでいいの?と語りかける。
エルのように自分も何かの分野で活躍したい!そうなってはじめて自分と釣り合う男と一緒になればいい!
そういう女性が増えると、世の中明るくなりそうだね?という価値観の提示に、「そうだ、私も頑張ろう」という観客がいたから、この映画は当時アメリカでヒットしたんだと思います。日本の女性もエルのようになると日本が明るくなると思うので、私はこの映画を女性にススメています。

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