トイ・ストーリー ネタバレあり感想&映画脚本分析

トイ・ストーリー
上映時間 81分

監督:ジョン・ラセター
脚本:ジョス・ウィードン(脚本)、アンドリュー・スタントン(原案/脚本)、ジョエル・コーエン(脚本)、アレック・ソコロウ(脚本)、ジョン・ラセター(原案)、ピーター・ドクター(原案)、ジョー・ランフト(原案)

ログラインは、カウボーイ人形のウッディは、持ち主のアンディの大のお気に入りなのだが、彼の誕生日にやってきた最新の宇宙ヒーロー、バズ・ライトイヤーにその座が奪われそうになり、バズと対立、外出先でケンカをするうちアンディと離れ離れになってしまう。彼らは果たしてアンディの元へ戻ることができるのか。


2017年6月17日に、トイ・ストーリー4が公開される。久々に、ジョン・ラセターが監督として復帰するそうです。また、トイ・ストーリー4の脚本に『セレステ∞ジェシー』脚本チームのラシダ・ジョーンズとウィル・マコーマックが参加だということです。今から楽しみ。
トイ・ストーリーの脚本は、年単位の歳月をかけて入念に作り上げていくのが特徴です。

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トイ・ストーリーの脚本チームはそうそうたるメンツでした。
ジョス・ウィードンは、のちに『アベンジャーズ』などを監督。
ピーター・ドクターは、のちに『モンスターズ・インク』などを監督。
アンドリュー・スタントンは、のちに『ファインディング・ニモ』などを監督。
ジョー・ランフトは、のちに『カーズ』の監督。
素晴らしいはずです!

では、トイ・ストーリーの脚本を分析していきます。

toystory トイ・ストーリー
<鑑賞済みの方を対象にネタバレありで語っていきますので、見ていない方はご覧になってからがいいかと思います>

主人公の弱点から逆算して、状況設定やライバルを作る

トイ・ストーリーは、1995年に公開された作品なのですが、いま見ても脚本のうまさに感心させられます。
なぜこれほど高評価を得るのか。
それは、キャラクターがわかりやすく、感情移入しやすいからです。

通常、観客は、人間に感情移入して映画を鑑賞するものです。
ですが、トイ・ストーリーの場合、おもちゃが人間のように生きているという設定をまず観客に理解してもらわないといけないハードルがあります。そのハードルを超えやすくするには、おもちゃが、人間のような風貌であるほうがいいわけです。できれば思考も。
ウッディは、カウボーイがモデルの保安官ですので限りなく人間に近く、見やすい。考え方も人間臭いずるさや欲求がある。
そうすることで、見ている方が応援しやすくなるのです。人は、自分に近いキャラクターをついつい応援したくなるもの。

次に、キャラクターをわかりやすくする方法として、主人公の弱点をあらかじめ提示する。
ウッディの弱点は、アンディに1番に好かれたいという執着心です。
一方、これは強みでもあります。
持ち主であるアンディの一番のお気に入りの座は、他のおもちゃからの信頼を獲得でき、リーダーシップをとれるということにもつながる。
キャラクターの強みと弱みは、裏表であることがほとんどです。
そして、たいがい弱みが露呈し、その克服の旅に出る。
つまり、トイ・ストーリーは、ウッディがアンディの一番のお気に入りの座から転落するという恐怖を克服できるか、がまずお話の縦軸になります。

では、その弱点を克服させるために、脚本家が何をするか。
当然、ウッディに試練を与える。
我々の人生と同じです。乗り越えても乗り越えても試練があるのが人生です。
次から次へと災難が降り注ぐ、でも諦めない、というキャラクターが観客に好かれます。
ふてくされて、何もやらないヤツなんて、魅力がないですからね。
つまり、その人の魅力を引き出すには、与えられた試練をどう乗り越えるのか。
これに観客は注目し、ストーリーに引き込まれていくのです。

すると状況設定を作らないといけません。
ウッディのために、より厳しい試練を与えるステージを作ってあげる。
それはなにか。
『アンディの誕生日』です。
誕生日は、新しいおもちゃがやってくる恐怖のイベント。

こういう状況説明を5分足らずで一気に見せ、観客の目線がおもちゃ(ウッディ)目線に変えられていることに我々は気づきません。
通常なら感情移入しないものに対して、我々は脚本家によって感情をコントロールされているわけです。
これがうまい脚本なのです。

そして当然、アンディの一番のお気に入りの座を奪う恐れのある強敵・ライバルが現れる。
それが、バズ・ライトイヤーというわけです。
これがまたわかりやすいキャラクター。

ウッディは、カウボーイという古臭いイメージ。若々しさもなく、背中のひもを引っ張ると話すというオールド感。
ウッディ=カウボーイ=古臭い=捨てられるかもしれないというイメージを観客に想起させる。

一方、バズ・ライトイヤーは、最新の宇宙ヒーロー。流行のスペースレンジャーであり、高性能かつボタン式で話すというおニュー感満載。
バズ=宇宙ヒーロー=新しい=好かれる要素しかない。

このようにキャラクターの対立をわかりやすく対極に作ることで、観客はこの物語にすんなり入っていけ、納得もできる。胸に引っかかるようなざらつき感がなく安心して鑑賞できるのです。

で、ウッディのために、次やることは簡単。
バズ・ライトイヤーに一番の座を奪われること。
そうすれば、2幕目から、さあこの状況から、どうやってウッディは1番に返り咲くことができるのか、という関心を観客に提示して楽しめるというわけです。

主人公は常に、選択と決断に迫られる

ウッディは、バズに1番の座を奪われたことで、アンディだけでなく、他のおもちゃからも人気を失います。
これはどうしてそうなるのか。
それは今後、ウッディ自身で、この状況を解決しないといけませんよ、ということを提示するためであり、より主人公に過酷な状況を与えるため孤立させているのです。

そして間違った選択をして、さらに主人公を追い込むということをやらないといけません。
ウッディの場合、真っ先に、1番へ返り咲きするためにしたことは、バズを文字通り蹴落とすという方法でした。
我々の実社会にもすぐこの手に走るヤツいますよね。そういう人は、たいがいあとで苦労する。
要は、卑怯者なわけですから当然、最悪な結果にウッディもなる。

ただ、重要なのは、主人公を憎むキャラにしてはいけないということ。
ちょっとした悪巧みが、思わぬ偶然が重なり、自分でも予期していなかった最悪な結果に陥る。
この事件が必要になります。
脚本で大事なのは、”偶然”は、悪いときしか使わない、ということです。
使ってもいい”良い偶然”は、のちのち悪いことが起きる伏線でないといけません。(例えば、きれいな女性と恋仲になった→そしたら怖いお兄さんがやってきた、みたいなこと)

で、間違った選択をしたために、問題がさらに広がります。
おもちゃは常に持ち主の家の中にあるもの。が、外へと舞台が変わる。
ただし、いつまでもウッディとバズのケンカを我々は見たいわけではありません。
どっちが1番か、ではお話を引っ張ることはできない。
次に重要なのは、問題の広がりの中で、おもちゃたちにとって、最も恐れることは何かということがポイントになっていきます。

2幕では、家の中という日常から、外という非日常におもちゃが飛び出し、いつも見ていた風景や世界が一変します。
そうなれば、当然、危険がないわけがない。
新たな敵だって登場する。
敵というのは、最も彼らが恐れるものでないといけない。
それが、シドの登場となるわけです。
おもちゃを大切にしない人間が、彼らにとって一番怖い存在だと観客に知らせることで、観客もはっとさせられる。我々は人間ですから、やる方であり、やられる方でないのでこの辛さは気づかなったけれど、もうすっかりおもちゃ目線で見ているので、すんなりシドを恐怖に感じ、憎めるわけです。

シドの登場で、ウッディとバズには共通の敵ができた。観客もそれを理解した。
では、3幕には、何をするのか。
シドから逃れ、どうやってアンディの元へ彼らは戻ることができるのか、に集中できるのです。
どっちが1番なんて、この際どうだっていい。
観客は、彼らがどうやって戻ることができるのか、にハラハラドキドキするのです。

それには、ウッディ一人の力では無理です。
よって、お話は、ウッディとバズのバディものになっていくわけです。

バディもので大事なのは、当たり前ですが、2人は離れ離れになっていはいけないということ。
もしウッディが、一人で帰ってきました、では話にならない。
そのために、他のおもちゃは、ウッディがバズを転落させたひどいヤツと思わせておくことで、一人で帰ってきても歓迎されない世界がある。元の日常には戻れないというふうにしてあります。
そして、誤解を解くには、バズがいないと信頼の回復ができない。だからバズが、自分がスペースレンジャーではなく、ただのおもちゃだと落ち込み、腑抜けても、彼を見捨てることができない。
必ずバズを連れて、アンディの元へ戻らないといけない。目的がシンプルであることもバディものでは重要。

そうすれば、必然と選択と決断を迫られ、主人公を困らせることができる。
なぜなら、「ほら、一人でなら逃げられるよ」と神様(脚本家)が何度もつきつけることで、ウッディが苦悩する場面を作れるから。
そして、バディものにする利点として、相対する者同士であるからこそ、互いで問題をさらに生み出し、それを解決するために、対立し葛藤を見せることになるので、より深いドラマになりやすい。
トイ・ストーリーのテーマである、友情が描きやすくなった。
ラストは、おもちゃみんなで協力してシドを倒し、バズの弱点も克服され、アンディの元へ戻り、ウッディは弱点を克服して新しい日常を手に入れた。

それはなにか。
アンディに1番に好かれることも大事だが、それ以上におもちゃたち仲間と楽しくいられることも大事ということに気づいた。
次の誕生日はもう怖くない。だって仲間が一緒だから。それが観客へのメッセージにもなっているので胸に残る作品なのです。

それが、トイ・ストーリー2とレベルアップしていくので、ピクサー映画は恐るべしなのです。

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