受賞作をシナリオ分析

第17回フジテレビヤングシナリオ大賞
受賞作:『超能力戦隊エスパーズ』
受賞者:古谷俊尚(古家和尚)

2005年9月号月刊ドラマ
月刊ドラマ 2005年9月号掲載)

ログラインは、大学受験に失敗し、彼氏にも振られた木村咲子が、念力で輪ゴムが切れる超能力を持っていたことから、何の役にも立たない能力者が集う超能力戦隊エスパーズに強引に入隊させられる。銀行強盗に遭遇した彼らは、強盗犯を捕まえるべく持てる超能力を発揮、咲子も自分の能力を信じて挑むアクション・コメディ。

↓↓↓↓↓(『超能力戦隊エスパーズ』のシナリオ一部)

月刊ドラマ

選考するフジテレビのドラマ関係者が、何を新人作家に求めているのかを知ることは大事だと思います。
第17回の選評座談会によると、作品『超能力戦隊エスパーズ』に対して、
この手の狙ってるものって幾つもあるんだけど、たいがい最初はよくても途中で破綻してたりとか、そういうのが多い中、かなり強引だけれども、最後まで何とか読ませていく筆力があった
これを買ったというよりは、これを書いた才能。この人とモノを作っていったら、すごい弾けたものができるんじゃないかという期待度が大きいよね」
「発想とか会話のやりとり、勢いとかで評価されたんだけど、他の作品を読んでみたい。力はある」
「狙ってる人はいっぱいいる、その中で光ってる。この作者は今回全部で3作品も出している。いろんなものが書ける。そこにも一票入れましたね
と、古谷さんがヤンシナの傾向と対策を彼なりに学んで、そして狙って応募していることを選考員は気づいて審査しているようです。
こういう狙って書いたものを嫌がるコンクールもありますが、フジテレビはむしろ歓迎している。作品だけを見るのではなく、これから一緒に仕事をするかもしれない脚本家の特徴やその姿勢も審査対象にしているということ。

では、それだけ狙ってる作品が多くある中、なぜ光った作品になれたのかというと、それは応募者の熱意や思いの強さが影響するのだろうとも語られている。古谷さんは3作品を応募し、ラブストーリーなど他ジャンルの作品も提出していた。
この応募者の熱意や思いが必要というのはまさにそうで、脚本スクールなどに何年も通い、熟れた感じでこんなもんでしょう感のある作品はすぐにわかります。どんなにうまくても、やはり光ってないんですよね。それと既視感がある。新しいことをして失敗したくないという恐怖が働くのでしょうか。
脚本を学び始めたばかりの人や恐れ知らずの若い感性にはどうしても勝てない。作品に勢いがあるから。
もし、二次選考や三次選考の常連で受賞に届かない人は、一度慣れた環境を離れることをオススメします。そして、あなたの作品を読んだことがない友人や、もっといいのはプロの脚本家やプロデューサーに見てもらいましょう。必ずあなたのウィークポイントが浮き彫りになるはずです。

『超能力戦隊エスパーズ』は、どこがよかったのでしょうか。
読んだ印象としては、構成に強引さが見られて粗っぽさが目立ちますが、それを帳消しするキャラクターと会話のおもしろさが際立っていました。
そして、主人公の役に立たない超能力の行方にちゃんとオチがあって良かったです。
冒頭、木村咲子はすべり止めだった大学に落ちて、彼氏には「嫌な事は一日で全部済ませた方が後で楽だろ?」という理由で別れを告げられます。怒り心頭でぶん投げてしまった携帯電話を探していると、そこで小学校の旧友、山チンと再会。彼と会話が弾み、咲子の特技だった念力で輪ゴムを切るという超能力を見せてくれと頼まれます。その能力は今も健在で披露すると驚かれました。しかし、こんなものは何の役にも立たないと卑下する咲子。そのとき、彼女の背後にいた超能力戦隊エスパーズの指令官・渡辺太郎が、「馬鹿者!」と叱りつけます。彼は、何の能力も持っておらず、ただの超能力好きで、能力者を集めている変な人です。そんなかなり怪しい彼が、咲子を成長させるメンター(指導者)になっていきます。渡だけが彼女の能力を根拠なく役に立つと信じている。視聴者(読者)も輪ゴムが切れる超能力が何の役に立つのか?と思っているから、渡の超能力にかける情熱とクソ真面目な語りがおかしく、咲子の冷静なツッコミも映えて、二人の掛け合いがおもしろかった。
そしてその役に立たないという思い込みを利用して、ラスト、銀行強盗事件を解決するアイデアに持っていけたところがこの作者の力量だと思います。強引でしたが楽しめました。
アクション・コメディとして十分成立しており、絶賛するほどではありませんでしたが、作者の面白いものを見せてやろうという気概が伝わって、作品として光っていたというのは納得できます。

また、”特別な能力使いが問題を解決し成長する”つながりで、2015年の第27回ヤンシナ大賞作品『超限定能力』の選評座談会を紹介します。
皆が推す作品がない中、どういうところが評価され大賞に選ばれたのかというと、
「ユニークさ、アイデアの方向性がうちのカラーとマッチする作品を選ぼう」とした。
大賞に選ばれた作品は着眼点がすごく面白くて……。(中略)身近で誰もが欲しいだろうみたいな能力に着眼して、それを主人公の成長と絡めて話を作れていたのは、……やるなと。(中略)主人公の成長が描かれていたので水準以上ではあるなと思いました」
「最初の入り口がとっかかりやすいというか、興味をすごく引く設定で。(中略)成長していく過程の起承転結が全体的にすごくハッキリしていた。(中略)最初の10分が勝負だったりすると思うんで」
(詳しくは、2016年1月号の月刊ドラマに掲載)

これらからわかるのは、最初の10分の引き(フック)が大事だということ。作家独自の着眼点、アイデアが必要だいうこと。そしてそれが主人公の成長として描かれていれば、水準以上になるということです。
これ、難しいことは言っていないんですよ。作劇するにあたって当たり前のこと。
にもかかわらず、当社に寄せられるシナリオ添削の作品もそうですが、なかなか書けていない人が多い。
最初の10分をこんな無駄な話に使っていいのか?
このアイデアに既視感はないか?
主人公の成長が描かれているか?
そもそも物語が主人公の話になっているか?
こんな単純なことをまったくチェックしていない方がいる。
シナリオは、客観的になれないとその作品がおもしろいかどうか気づけません。
上記をチェックをするだけでも、ある程度の水準をクリアしているか自分で確認できるはずです。
ヤンシナは特にそれらを厳しく見ているようなので、いま一度応募前にチェックしてみましょう!

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