シナリオコンクールについて
「書いたらシナリオコンクールに出す!」
シナリオコンクール審査員の座談会を読むと、当たり前ですが、一緒に仕事したときにある一定のクォリティーがあるホンを書けるかどうかが1つのポイントになるようです。つまり、コンクールは、作品を探しているというより、一緒に仕事ができる脚本家を探してるといえます。『コンクールに出す=売り込み』という気持ちで望むといいでしょう。
コンクールの全てを知っているわけではないですが、経験したのは、ファイナリストに選ばれると、担当者から電話連絡がきて、受賞候補になっていることとそれを受け入れる意思があるかどうかの確認があり、授賞式で結果がわかるケース。それと、同じように連絡がきて、授賞式前にプロデューサーの数名による面接をするケースがありました。主催する側としては、受賞候補が賞金稼ぎでは困るので、そういう最終チェックがあるようです。ですから、本気で脚本家を探しているのだと思います。
「脚本家になる方法は、コンクール受賞が近道!」
シナリオコンクールは、脚本家になるための手っ取り早い登竜門だと思います。コンクールは水物といわれ、運がかなり左右するのも事実で、結果を見るたびに一喜一憂することもありません。送って送りまくる根気が何より大事です。プロになれば、もっともっとダメ出しの嵐です。精神をズタボロにされます。
受賞者に話を聞くと、何作品でも出していいコンクールだと3つも4つも出してるのが当たり前。中には10作品近く送ったという人もいました。そういう方と話してるとプロになりたいという意気込みがまったく違います。頂いた名刺には、きちんと『脚本家』とありました。もちろんデビューはしていませんでした。受賞者の多くは、かなり強気です。この作品が選ばれないのはおかしいと本気で思って応募してますから、それ相応の結果がでても当然となるわけです。
そのくらいの心意気で応募してますか?
気持ちや想いは、どうやら作品に乗り移るみたいです。審査委員の方も作品からそれを感じることがあるそうです。
「結果がでないときは?」
1次選考に通ったことがない人は……
目安として、小さな賞でも構いませんが、3年間真剣にチャレンジして、1次すら通らないのは問題です。3年もシナリオを勉強すれば、それなりの成績は得られるはず。勉強の仕方が悪いか、そもそもシナリオを理解していない。このサイトのイントロダクションから読み直してください。オススメしたシナリオの本※を繰り返し読んでください。おそらく書きたいことだけを羅列して書いてるだけとか、必ず原因がありますので自分で気づいてください。
どうしても分からないという人は、今、活躍する脚本家のシナリオを模写してください。そこでシナリオのリズムをつかみます。模写していて楽しい脚本家のホンを選ぶといいです。
また、例えば、テレ朝のコンクールでは2次まで行くけど、フジでは1次も通らない場合は、おそらく相性の問題。そういう場合はテレ朝で評価されたであろう良い部分を伸ばし、評価されなかったであろう箇所は改善して書く。書いたら書きっぱなしではなくて、分析をするといいでしょう。受賞経験者でも、他局のコンクールでは1次も通ったことがないというのはよくある話です。
※オススメのシナリオ本
シナリオの基礎技術 / 新井 一
映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
審査員は作品のどこを見てるのか?
シナリオに熟知している人からまったく知らない人まで多くの方が関わっているので、一概に言い切れませんが、構成力とセリフ力を特に見ていると思います。そして、「構成がよくて、セリフがよくない」より、「セリフがよくて、構成がよくない」場合の方が有利のような気がします。構成は、制作経験のあるプロデューサーや監督のアドバイスで劇的に変化ができます。しかし、セリフは作者の力が大きく作用する。そこだけは、アドバイスですぐ変わるわけではない。だからといって、気を張り、全セリフをよくしなくていい。ここぞという場所で、良いセリフがキラリと光ればいい。光るには、そのキャラクターだから許されるものでないといけない。言葉だけが浮くようなことはないように。
傾向と対策は必要か?
必要か必要でないかでいえば、それほど固執する必要はないと思います。ただし、各局の特色があります。放映されている作品を見れば一目瞭然ですが、そのカラーを理解しておいたほうがいい。先述しましたが、選ぶのは現役の制作陣です。彼らと一緒に仕事ができる脚本家を探している。彼らの感覚を理解できる人じゃないと、仕事ははかどりません。合わせられるのも、技量の内です。そこが懸賞小説と違うところかなと思います。懸賞小説の多くは、下読みから作家が作品を選ぶことが多い。だから自分が好きなこと書いても認められることがある。シナリオコンクールの多くは、制作陣が作品を選ぶ。作家が選ぶコンクールであれば、ある程度好きなものを書いても許されるかもしれませんが、その過程で制作陣のチェックはもちろんあるでしょう。才能を発掘というよりは、仕事のパートナー選びに近い気がします。
今までなかった題材を見つけろ!
世相や流行りによって、題材が偏る傾向があるそうです。その場合は当然、競争になるので、作品を評価するハードルが上がります。ですから逆に、ニッチな題材をいち早く見つければ、見る側のハードルが下がるわけです。意外と見落としがちですが、自分の得意分野(仕事や趣味)の中から、実はこんなことがあるんですよというものを取り上げると、案外ウケがよかったりする。しかし危険なのは自分だけが楽しいという客観性を見失いがちなので、そこらへんは塩梅です。
良い題材を見つけられない場合は、キャラクターにアイデアを注ぐ。アイデアだけで、作品が突き抜けることがあります。
コンクール受賞作は、低予算で制作される
低予算を無視して、ハリウッド大作みたいの書いても選ばれる可能性は低いです。あつかう題材も放送できるものかどうか、常識で考えてください。
審査員にも好みがある!
人は誰でも好きな映画は熱心に観るけれど、苦手なジャンルははじめから構えているので、なかなか世界観に飛び込めない。それは審査員も同じだと思います。コンクールは、運が左右する所以です。だから落選したからといって、毎回落ち込むことはありません。コンクール受賞はプロになる近道ではあるが、プロでやり続けるには、自分の作品を気に入ってくれる感性が似たプロデューサーと出会わないと仕事が続きません。いつかきっと自分の感性に合うプロデューサーや監督に出会えると信じて、諦めずに書き続け、応募し続けてください。
それでも結果は事実!
事実を受け止める勇気を持つのは、大事です。脚本家志望は文句と愚痴が多い。
「あんな受賞作品のどこがいいのか」「審査員の見る目がない」「だから日本のドラマはダメなんだ」etc……
実際、受賞作や最終選考に残った作品の中にもなんじゃこりゃというのがあります。それだけ頑張ったから、他人の作品を言いたくなる気持ちはすごくわかります。しかしそれでも、結果は残酷なことに事実なのです。事実を受け止めて、問題を見つけて、成長できるかが、作家の分かれ道のような気がします。いつまでもひねくれているとうまくいきません。切り替えが肝心!