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オススメ海外ドラマ『ブレイキング・バッド』の感想と分析

ブレイキング・バッド

オススメ海外ドラマ『ブレイキング・バッド』の感想と分析

作品紹介

ブレイキング・バッド
シーズン1〜シーズン5

ウォルター・ホワイト (ブライアン・クランストン) 高校の化学教師
ジェシー・ピンクマン (アーロン・ポール) ウォルターの元教え子で、ビジネスパートナー
スカイラー・ホワイト (アンナ・ガン) ウォルターの妻
ウォルター・ジュニア (RJ・ミッテ) ウォルターの脳性麻痺の息子、高校生
ハンク・シュレイダー (ディーン・ノリス) ウォルターの義弟で、DEA(麻薬取締局)の取締官
マリー・シュレイダー (ベッツィ・ブラント) ハンクの妻、スカイラーの妹で、ウォルターの義妹

今回は、映画でなく、海外ドラマを分析していきたいと思います。
最近は、連ドラのシナリオ大賞もありますし、ドラマの1話目がどのように作られているのか分析するのはいい勉強になります。
また、長い夏休みの機会に、今回紹介する海外ドラマ『ブレイキング・バッド』は、絶対オススメ! どハマること間違いありません!!
では、さっそく人気海外ドラマのブレイキング・バッドを分析します。
ブレイキング・バッドは、Huluなどで観られます。

ブレイキング・バッド

ログラインは、低収入の高校の化学教師が肺がんを宣告されてしまい、身重の妻と脳性麻痺の息子に財産を残すため、化学の知識を使ってメスと呼ばれるドラッグを密造し大金を得ようとする話。

連ドラには、一話完結型のドラマとストーリードラマがあります。
・一話完結型ドラマというのは、『相棒』などの刑事ドラマ、また医療ドラマのように、主人公が前の話に影響を受けて、変化や成長などせず、毎回なにかしらの事件を通してドラマが成立するもの。
・ストーリードラマというのは、一話で完結せず、全話を通して、主人公が対立と葛藤を繰り返し成長し、変化するお話。恋愛ドラマなどがそうです。

一話完結型ドラマは、一話見逃しても次の話に影響がない上、視聴率がよければ長期シリーズ化が見込め、また視聴率が低い場合は途中でテコ入れが可能なので、最近の日本のテレビドラマはこちらを採用することが多いです。安定した視聴率が期待できるので、やたら刑事ドラマ、医療ドラマが増えたのはそのせいです。
一方、ストーリードラマはドラマチックな展開ができ、視聴者がハマればファンとなり、視聴率は最終回に向けて伸びていきます。しかし一話でもつまらなければ、視聴者が離れ、どんどん視聴率は下降し悲惨なものになります。

『ブレイキング・バッド』は、ストーリードラマになります。毎話、次回どうなってしまうのかというひっぱりをもって一話を終えます。これがシーズン5まで続きます。
それでは、シーズン1の1話を三幕に分けて解説していきます。

1話目は放映時間が約60分なので、単純に1幕は15分、2幕が30分、3幕が15分と見当をつけてドラマの流れをみます。

1幕は、主人公の紹介の見せ方に注目!

1幕のプロットポイントが約19分目、主人公のウォルター・ホワイトが肺がんを宣告されたところなので、そこまでが1幕になります。
冒頭、砂漠の荒野を、ガスマスクをつけた運転手がキャンピングカーを暴走させている。停車すると、ブリーフ姿の中年ウォルターが外へ飛び出し、混乱した様子で頭を抱えた。そして息を止めて、車内に戻り、倒れている人間から拳銃を奪い、なぜかビデオカメラをもって外へ出てくる。すると、ビデオを回し、名前と住所を告げ、これは警察に向けての自白ではなく、家族のメッセージだと遺書めいたことをビデオに残す。
「どうしようもない事態になった。すぐに父さんの事件を耳にするだろう」
サイレンの音が彼の方へ近づく。そして、
「世間にどう思われようとこれだけは伝えておく。家族のためにやったことだ」
と拳銃を手にして、サイレンが迫るのを待ち受ける。
ここまでの約3分30秒で、視聴者に、家族のために罪を犯す男の話をします、という象徴的なシーンを見せてタイトルに入った。
特別に新しい冒頭の作りではありませんが、いい入りです。説明しすぎず、謎も残しています。

そして改めて、順を追う展開になります。しかしそのほとんどが、主人公の紹介。
それを本人が語るのではなく、彼に関わる人物たちを交えて、ウォルター・ホワイトは何歳で、どんな家族構成で、家族ではどんな立場で、どんな経済状況で、何の仕事をし、どんな問題を抱えているのかをじっくり説明しています。

ウォルター・ホワイトは、50才の誕生日を迎えた。カカア天下で身重の妻に、脳性麻痺の息子。シャワーの湯沸かし器が買えない経済状況にいる。かつては、研究所でノーベル賞の研究チームにいたが、今はやる気のない生徒に化学を教える教師。生活を支えるため、洗車のアルバイトまでしている。すると、洗車にやってきた生徒に見つかり、馬鹿にされる。彼の誕生日の日にだ。なんて日だ。しかし家に帰ると、サプライズパーティーが用意されていた。だがその夜、妻は出費をカバーするため、ネットオークションに出品しお金を捻出している。情けなくて嫌になるウォルター。彼を一日中悩ませているのは、金だ。家庭でも職場でも尊敬されず、威厳がないのは、低収入だからだと彼は強く思い込んでいる。だから妻との夜の生活も気分が乗らない・・

主人公がこういう状況から逃れたいと思うのは、テレビを見る視聴者層にあっているだろう。働いても働いてもどうしようもない状況から抜け出せない人たちにどんな希望を見せられるか、楽しみになる。
だが、ウォルターにさらなる追い打ちが……
彼は、肺がんを宣告される。
金がない上に、これから家族の生活はどうなってしまうのか?
家族を心配する父の思いが痛いほど理解できる。
視聴者に感情移入をさせたところで、2幕はどうなってしまうのか……と続く。

2幕は、主人公の葛藤、そして決断をみせる!

2幕では、癌を患った体で、どうやって一発逆転し、家族に金を残してあげられるかが、主人公の目的となって展開していきます。

身重の妻をいたわり、ウォルターは癌のことを家族に伝えられません。病院で使用した15ドルのクレジットカードの請求を問いつめられて、下手な嘘をつく始末。洗車のアルバイトに行きますが、こんなことではらちがあきません。
何かいい方法がないか……。夜通し彼は考える。
そこで思いつくのが、サプライズパーティーに来た、DEA(麻薬取締局)のエージェントで義弟のハンクが、ドラッグ密造のアジトから70万ドルを押収したという話です。アジトには、そのくらいの大金が当たり前にあるということが頭に引っかかっていたウォルターは、今度アジトへ同行してみるかというハンクの冗談の誘いを鵜呑みにし、摘発するアジトに同行したいと申し出ます。
ここで重要なのは、ハンクのキャラ。彼は常に冗談をいってます。だから、こんな申し出も軽いノリで引き受け、自然な流れに見せました。
しかし、同行したからといって、お金が得られるわけではありません。彼の目的は、製造現場をみて、できるかどうかを確かめるだけだったのでしょう。ドラッグのメスは、化学の知識があればつくることが可能です。
そこで彼に最大のチャンスがやってきました!
DEAから逃れるアジトの主、ジェシー・ピンクマンとの出会いです。彼は、ウォルターの教え子だったのです。

そして、2幕のミッドポイント、約29分目にウォルターは、ジェシーのところに訪れ、最高のメスをつくってやるからビジネスパートナーになれ、さもなくば、警察に突き出すと彼を脅します。
大金を得る、一発逆転のチャンスをこうしてつかむことができました。
それからは2幕のプロットポイントの約43分目まで、ウォルターとジェシーのメスづくり完成まで順調に見せていきます。
その間、ウォルターの人格の変化も面白いです。
体の不自由な息子が、不良たちに笑われていると、妻と息子の前で、彼は強く出ます。このシーンは、ウォルターが死ぬまで家族を守る。死んでも家族を守るという覚悟をこの場面で見せているのです。

3幕は、キャラクターならではのアイデアで解決!

さあ、3幕はメスを売り、お金を手に入れることができるかに注目が集まります。
しかしそう簡単に手に入れてしまっては面白くありません。
相棒のジェシーがヘマをします。主人公の足をひっぱるために用意されているのかというキャラです。
ドラッグディーラーのギャング2人が、密造中のキャンピングカーにやってきます。
はじめはメスを買う取引にあらわれたのですが、最悪なことに、ギャングの1人はジェシーの元相棒で、ジェシーのせいで捕まった男です。その男は、ウォルターを覚えていました。DEAの仲間だと騒ぎ、拳銃を突きつけ、ウォルターは一転、死が早まってしまいました。
家族に金を残すために危険をおかしたら、危険しか残らなかった最悪な事態です。

彼はどうそれを回避するのか。
ジェシーはボコボコにされ、頼れません。
ウォルターは、メスのレシピを教えてやるからと、キャンピングカーに2人を招きます。
そこで彼は何をしたかというと、豊富な化学薬品があるキャンピングカー内で神経ガスをつくってしまうのです。化学教師のキャラクターならではのアイデア!
彼ら2人を閉じ込めて、失神させて逃れようと考えたのです。
それが成功し、冒頭のキャンピングカー暴走シーンへ戻ります。
サイレンが近づき、彼は自分の計画が失敗した後悔を家族へビデオメッセージに残し、自殺をはかろうとする。しかし、弾がでなかった……
さらにサイレンは消防車で近くの火事の鎮火にあらわれただけで、ウォルターの前を通りすぎていきます。

彼は助かりました。そして、ギャングから奪った金を洗濯機で洗浄し、家に帰宅します。
ウォルターは、化学の知識で最高のメスをつくったこと、大金を得たこと、そしてギャングを倒したことから、すっかり自信と誇りを取り戻しました。
さらに男も取り戻した彼は、ベッドにもぐりこむと、カカア天下の妻を黙って従わせるほど激しく求めたのでした。

1話にしてこの出来です。とってもよくできています。
この先、ウォルターはどうなっていくのか、どんな成長と変化を遂げるのか。
そして結末はどんなものが待っているのか楽しみな展開です。
ほんとに早く次の話が観たくなるつくりで、シーズンを追うごとに面白くなっていきます!
Huluで一気に見れますので、ぜひオススメです!