リトル・ミス・サンシャイン ネタバレあり感想&映画脚本分析

リトル・ミス・サンシャイン
上映時間 100分

監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
脚本:マイケル・アーント

オリーヴ (アビゲイル・ブレスリン)
リチャード(父) (グレッグ・キニア)
シェリル(母) (トニ・コレット)
フランク(叔父) (スティーヴ・カレル )
ドウェイン(兄) (ポール・ダノ)
エドウィン(祖父) (アラン・アーキン)

ログラインは、それぞれ問題を抱えた家族が、末娘のミスコン全国大会に出場するため、ポンコツ車で旅をするうち、それぞれの問題に立ち止まって助け合い、家族の絆を取り戻す話。

この映画で大切なことは、家族の一人が抱える問題に対して、一度みんなで立ち止まって考えることです。立ち止まらずに、個々でエンジンをふかしてる状態なので、家族という車が走らない。ポンコツ車になっている。
だからこの映画では、誰かが問題を抱えるたびにポンコツ車が止まる。あるいは、止めます。
そのアイデアが素晴らしい!
たしか、萩本欽一さんの運にまつわる本を読んだとき、運の良し悪しは家族単位で考えるといい、というようなことを読んだ記憶があります。
末娘のオリーヴがまさかのミスコン全国大会出場が棚からぼた餅的に決まった幸運から、それに反して他の家族の不運が続く。その不運に対して、家族で向き合ううち、家族全員の運気が上昇していく。家族は誰かひとりだけが幸せより、みんなで幸せを共有することが幸せなんだと気づかせてくれる作品でした。

また、見事な3幕構成で書かれていて、分量もほぼ1:2:1。
日常から始まり(1幕)、非日常の旅があり(2幕)、新しい日常(3幕)へ戻ってくる。脚本の教科書のような作品です。それでは、分析していきたいと思います。

little miss sunshine リトル・ミス・サンシャイン

<鑑賞済みの方を対象にネタバレありで語っていきますので、見ていない方はご覧になってからがいいかと思います>

ストーリーもキャラクター作りも逆算して考える!

まず、ストーリーを構築するときに、エンディングはどうなってほしいのかを作者自身が知ることが大切です。この映画の場合、家族の絆を取り戻して、再出発するということをエンディングでしたいのだと思います。
ということは、作り方として、『家族の絆がない=バラバラの家族』であることを1幕で紹介しなくてはいけません。また、再出発するのですから、出発ができていない、つまずいている状態を作る。
それを2幕でどのように絆を取り戻し、再出発できる過程にさせるのかを考える。すると、2幕でやらなければならないのは、バラバラの家族が必然的に拘束されて一緒にいなくてはいけないという状況を作る。そしてある目的に対して、前に進まなければいけないから、出発すれば必ず目的地があるロードムービーという選択をした。
などと、理詰めでストーリーを構築すると、ストーリーに納得感がでてきます。

キャラクターも同じです。
このキャラクターがこうなってほしいというのがあれば、まず、そうでないキャラクターを一旦仕上げる。それがキャラ設定のスタートになる。

キャラクターはどうなりたいか?
父は、自ら考案する9ステップに縛られなくなる。
息子は、ひきこもりから脱却し、心を開いて話す。
叔父は、失恋から克服し、憂鬱な気分から笑顔を取り戻す。
母は、お金の心配をなくし、夫婦円満を取り戻す。
娘は、外見を気にせず、自信を持つ。
おじいは、変わらず、精一杯生きる。

では、現在の状況がどうなっているのかを逆算して考えればいい。それが1幕で紹介するキャラになります。それを3幕構成で、どのように変化して達成させるかを考えればいい。
脚本は、おしりが決まっていないうちに書き出さないほうがいいということです。

ミッドポイントで何が起きたか?

おじいが死にます。過剰薬物とエロ本によるハートアタックで死ぬ。彼らしい死に様です。しかし、彼の死に姿は一切見せないことがポイントです。
この映画の流れで、おじいの死はちょっとした違和感なんですね。だからあえてその死んだ姿を見せない。リアリティーをなくす感じです。本当に死んだの?あのキャラならバッと起きそうだよね、ぐらいがいい。
だから、その後の遺体を連れて行くというおかしな展開ができる。

また、身内の死は最大の不幸です。おじいにいたっては、あんなどうしようもないポンコツキャラですが、家族にとっては唯一の精神的な支え。その支柱を急に失ったとき、誰が家族を支えるか。それは家族みんなです。団結して支えるしかない。偶然な出来事に対して、必然的に家族の結束を高める展開にさせた。ストーリーがぐっと前に進みます。あとは、家族で幸運をつかむしかない。その希望が直近にあるのが、末娘のミスコン全国大会に出場すること。ポンコツ家族は希望に向かって前へ進みます。

それと、死というのは、生きていれば誰もが訪れることです。
しかしそれを明確に意識して生きている人は少ないはずです。失恋で自殺未遂を起こした叔父のフランク。オリーヴの兄ドウェインは、人生に悲観的で挑戦しない、ひきこもり。生というものを軽視しています。
一生なんてあっという間! 立ち止まってちゃダメ! 進めばそれが道になるんだから、もっとガンガン生きようぜ!
そんなおじいの生き様と死に様が、2人に大いに影響を与える。もちろん自ら考案した9ステップに縛られて生きる息子にも影響を与えた。

おじいは生前、家族に色んな言葉を残します。
中でも、ドウェインに捧げた人生アドバイスがいい。

”女とヤリまくれ。一人じゃなくて大勢と寝ろ”

これは、その言葉のとおりでも構わないけど、いろんな人を知って成長しろということだと思います。
彼は自分の殻に閉じこもったままで身動きができない。『体験して、失敗して、成長しろ』という思春期の少年に向けたアドバイス。

また、9ステッププログラムの出版が見送られ、落ち込む息子に対して、そして横で怒っている嫁に対して、

”結果はどうあれ、お前は精一杯やった。チャンスに挑戦したお前を誇りに思う”

それと、オリーヴが全国大会出場にナーバスになっている前夜、

”負け犬の意味を知ってるか? 負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ”

耳が痛い人が多いのではないでしょうか。
人生は、もがいて、もがいて、もがき続けなければ、勝者にはなれない。
転ぶことを恐れて、転ぶ前から心配して何も出来ない奴こそ、負け犬。
良いセリフは、ほとんどおじいが持っていきました。

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黄色のポンコツワーゲンバスは、家族の象徴

家族と一緒に旅をしている、もうひとつのキーアイテム。それが、黄色のポンコツワーゲンバス。
家族みんなでポンコツ車を押さないと、エンジンがかからない。
それはまさにこの家族を象徴している。
車をみんなで押して、初めて乗ることに成功したとき、おじいがオリーヴに聞きます。
「楽しい?」
オリーヴは嬉しそうにうなずく。
これが、家族なんです。家族はみんなで協力して幸せになる。
家族が苦しんでいれば、そこで立ち止まり、共に悩み考えて、また車を押して走りだす。

ミスコン会場に到着したとき、ポンコツ車はドアが外れるほどボロボロ。
ミスコンでは、家族で末娘を守るために踊った。
家族は絆を取り戻し、またそのポンコツ車で再出発するため、日常へ戻っていく。
本当によく出来た脚本です。
何度も何度も繰り返し観るといろんな発見ができるはず。人生に行き詰まったときに、もってこいの作品でオススメです!

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