グッド・ウィル・ハンティング ネタバレあり感想&映画脚本分析

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
上映時間127分

監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:マット・デイモン、ベン・アフレック

ウィル・ハンティング (マット・デイモン)
ショーン・マグワイア (ロビン・ウィリアムズ)
チャッキー・サリヴァン (ベン・アフレック)
スカイラー (ミニー・ドライヴァー)
ジェラルド・ランボー ( ステラン・スカルスガルド)
モーガン・オマリー (ケイシー・アフレック)
ビリー・マクブライド (コール・ハウザー)

ログラインは、天才的な頭脳の持ち主だが虐待を受けたトラウマの殻にこもるウィルが、同じ境遇で育ち、最愛の妻を失った悲しみに浸る心理学者ショーンと出会い、トラウマを乗り越え、愛や友情、信頼を知り、大人へ旅立つ話。

何十回も繰り返し観ている作品ですが、まったく色褪せない映画です。
名ゼリフのオンパレードで、どの世代にも心に響く言葉と出会えるはずです。特に、思春期のティーンエージャーには胸を打つ作品なので、是非若い方に見て欲しい。
高校生の時、映画館で観て、初めて涙を流した作品で思い出深く、また脚本家は大学を卒業したばかりのマット・デイモンとベン・アフレックで、しかもアカデミー脚本賞に輝くのを見て、自分も脚本家になろうと影響を受けた映画。ヒューマンドラマ作品で、未だこの衝撃を越える映画に私は出会ったことがない。そのくらい素晴らしい映画だと思います。

この映画の中心テーマは、普遍的な”真の愛とは?” ”真の友情とは?” “人との真の信頼とは?”
という誰もが得たい価値に重点を置きながら、ウィルという真逆の青年を置くことで、どうやってそれを得ることができるのか、が肝になる話です。
ですが、ウィルだけがトラウマを克服し、改善される話ではありません。ウィルを通して、キャラクター全てが変化を遂げます。

なぜそんなことができたのかこの映画を分析していきたいと思います。
キーワードは、”小さな世界”。

グッド・ウィル・ハンティング good will hunting

<鑑賞済みの方を対象にネタバレありで語っていきますので、見ていない方はご覧になってからがいいかと思います>

グッド・ウィル・ハンティングは、マット・デイモンが大学の授業の課題で戯曲を書いて提出したのが発端で、それを読んだベン・アフレックが映画にしようと動いたそうです。親友の才能を見抜き、その才能に妬むことなく動くベン・アフレックは、まさにこの映画のチャッキーそのもの。
才能とはきっかけに過ぎず、その才能を伸ばしてくれるのは、人との出会い、そして運です。運というのは、自分で生み出すことは難しく、たいがい他から運んでくれます。だから”運”なのです。
マット・デイモンが扮するウィルはまさに、才能の塊。だがその才能を伸ばしてくれる人と出会っていなかった。なぜなら彼が拒んでいたから。
出会いがないときというのは、総じて、自分の心が開いていないとき。
それをこの映画では、”小さな世界”と表現しています。

小さな世界とは?

当たり前ですが、人は、それぞれ様々な環境下にあり、その影響を受けて生きている。そして残念なことに、努力しなくて済む環境にいればいるほど、その影響は悪い方向へ導く。
そんな状況に、ウィルはいた。4人の仲間、チャッキー、モーガン、ビリー。
学校もいかず、その日暮らしの適当な仕事をこなし、安い酒を飲み、ナンパをし、バッティングセンターで夜な夜な遊ぶのが日課。気に入らない人間はすぐに殴り、一緒になってケンカをする。いつもいつも彼らは行動を共にする。そこから誰も抜きん出ないようにするのが、若い世代特有の”THE・友達”ですね。

大人になると気づきますが、自分の挑戦をいつも止めてくれるのは、昔からの友達だったりします。だから挑戦し続ける大人になると、友達がいないという奇妙な現象になる。社長になるような人はたいがい孤独なのはそんなことも影響があるのでしょう。

さて、その小さな世界ですが、ウィルは、幼少期の虐待のトラウマから、人を信用していません。特に大人は絶対に信じていません。信じられないという思い込みが、子どもっぽいチャッキーたちとの絆をより深くする。ウィルはそこから抜け出せないし、なにより抜け出したくない。なぜなら一人ぼっちになるのは嫌だからです。人に拒まれるのが怖いからです。その小さな世界から彼は一歩も抜け出せない。
その現象として、人を愛し抜くことを知らない、大人の話を聞けない、友達に批判的なことを言えない、と彼は、恋人ができても、形上の友達がいても、手を差し伸べる大人が現れても、できないづくしなんです。
その可能性を消してるのは、ウィル自身。自分の小さな世界に閉じこもったままだからです。

この小さな世界は、ウィルだけが持っているわけではありません。
ウィルをセラピーするショーン自身も妻が死んでしまった小さな世界から抜けだせません。ランボー教授は、過去の栄光と権威に縛られ、他人の才能に嫉妬する小さな世界から抜け出ません。ウィルを愛するスカイラーも、チャッキーもみんな小さな世界の中にいる。

我々も同じです。みんな自分で作ってしまった小さな世界の中で、苦しみ、悩み、悶々としている。しかし、その小さな世界から踏み出せば、世界はどこまでも広がっている。旅立つきっかけと勇気さえ作れば、いつだってできる。これがこの作品の訴えかけてくるメッセージだと思います。

ウィルの成長と勇気により、ショーンもランボー教授も小さな世界から飛び出す。
スカイラーは、ウィルのために愛を訴え、チャッキーも、親友だからこそ彼を突き放します。
この映画のラストは、キャラクターみんなが小さな世界を飛び出し、変化する。そして観客も縛られた小さな世界から脱出するきっかけを与えてくれる。だからこの映画は、ティーンエージャーだった私にとって衝撃だった。

小さな世界を、分かりやすく揶揄するシーンがある。
それはランボー教授なのだが、ウィルの天才的な頭脳に気づいたランボー教授がウィルを探し、彼が働く大学の清掃管理室へ赴く。そしてウィルについて情報を聞き出そうとするが、教えることはできないと断られる。そこで、ランボー教授の助手が、「この方はランボー教授だぞ」と権威に屈服するかと思ったら、すかさず、管理のおじさんは、横に座ってる掃除夫を指して「こいつはヘイズ教授だ」と応酬し、退散させる。
小さな世界の皮肉だ。MITの教授の権威なんか、中で働く掃除夫でも取るに足らない存在。ランボー教授が、過去の栄光と権威に縛られている皮肉なシーン。他にも、そういった揶揄するシーンがあります。ランボー教授にとっては必要なシーンなのです。

キャラクターの重要性!

前回も言いましたが、キャラクターを作るときに大事なことは、そのキャラクターの弱点はなんなのか?を決めることです。
ウィルは、彼の過去(トラウマ)、愛を知らない、長所でもあるが天才的な頭脳が弱点。
ショーンは、妻の死が弱点。
ランボー教授は、過去の栄光と権威が弱点。
スカイラーは、両親を失い、天涯孤独が弱点。
チャッキーは、ウィルと一緒にいる楽しさが弱点。

その弱点は、彼らを特徴付ける強みではあるのだが、キャラクター自身はそれを失うことを最も恐れている。そこをどうネチっこく突くのかが、脚本家の技量。ウィルの弱点への抵抗が、スカイラーの別れの時に最大になるような構成にされている。
キャラクターの最大の弱点は、最大の決断の時、余計に邪魔をする展開を作ることが大事。これはアクション映画でよく使われる。また、人生でも同じ。大事な決断の局面はたいがい、自分の最大の弱点を克服するときだ。

グッド・ウィル・ハンティングは名言ばかり!

いい言葉との出会いは、その人の人生を変えるかもしれない。セリフは大切に!
と思うのが、脚本家だと思います。
では、名言にするにはどうしたらいいのか。
主人公を黙らせることです。ここは聞いて欲しいというときに、主人公を黙らせる状況にするのです。

まずは、ウィルがショーンに出会ったファーストシーン。ショーンは自分の描いた絵をウィルに分析され、妻を失い悲しみに浸って前に進めないことを暗に言い当てられる。そして妻を侮辱され、ショーンはただ怒るしかできなかった。だがその後、深く深く考え、ウィルを公園に誘い出し、こんな話をする。

「君は美術に詳しいだろう。だが、システィナ礼拝堂の匂いは?あの美しい天井画を見上げたことが?ないだろう?」

ウィルの痛いところを鋭く突いた場面です。ウィルは黙ります。なぜ黙ったのか。知らないからです。本で得た知識以上のことを持っていないから言えない。続けて、

「愛の話をすれば、愛の詩を暗唱する。けれど、自分をさらけ出した女を見たことは?君のために現れた天使。君を地獄から救い出す。君も彼女の天使になって彼女に永遠の愛を注ぐ。どんなときも、ガンに倒れても……。自分を愛するよりも強い愛で愛した誰かを失う。君はその悲しみと愛を知らない」

ウィルが得意気にショーンの弱点を突き、攻撃的に貶したことを静かに責めます。それでも彼は分からないかもしれない。逆転した言葉を使って諭します。

「君は孤児だろ。僕がこう言ったら?君の苦しみはよくわかる。オリバー・ツイストを読んだから。どういう気がする?」

ウィルは完全に黙ってしまいます。自分の苦しみは孤児のオリバーと同じじゃないと思えばなおさら。

「君から学ぶことは何もない。本に書いてある。君自身の話なら喜んで聞こう。それは嫌なんだろ?君はそれが怖い」

彼の弱点、自分の過去を話せと真正面からぶつかる。そして「後は君次第だ」と突き放して、ショーンは去っていきます。

このシーンは、特別大きな過去を持っていない現代の私たちにも響きますよね。
情報が溢れ、知った気になって、自分は行動せず、小さな世界から傍観するだけ。そのくせ、知らない世界についてはやたら攻撃的。人生は、あなた次第でどうだって変わるし、世界は受け入れる用意があるんだから、後はあなたが行動しろよ、ということです。
その後、ウィルは、スカイラーをデートに誘うという行動に出る。変化の兆しが徐々にでるきっかけになった。裏返せば、ショーンを信じてもいいかなと思い始めた重要なシーンです。

名言の後に、行動が伴うから印象的になる。

また、こんな言葉も若者には響くのではないだろうか。

「就職などどうでもいい。君は好きな道を選べるんだ。何をしたい?」
「本当は何がしたいんだ?」
「簡単な質問に答えられない。答えを知らないんだ」

自分が何をしたいのかを知らないのに、どうやって人に自分を理解されると思ってんの、ということです。
本当の自分はこんなもんじゃない。誰か私を見つけてくれと、若い頃は安易に考えますが、何かを得た人というのは、明確に欲しい物を知っています。そして得るときに、捨てることもできるんです。
ウィルもそうですが、現状は捨てたくない、でも何かを得たい。その場に座っていながら、ただ恵んでもらおうとしても、誰もくれません。そこでまた出てくるのが、彼の弱点、仲間です。

そしてチャッキーとのあのレンガ積みの休憩中の名シーンが生まれた。

ウィル「俺は一生ここで働いたって平気だぜ」
チャッキー「親友だからハッキリ言う。20年経って、お前がここに住んでたら、俺はお前をぶっ殺してやる。これはマジだ」
ウィル「なに言ってんの?」
チャッキー「俺が50になって、工事現場で働いててもいい。だがお前は宝くじの当たり券を持っていて、それを現金化する勇気がないんだ。お前以外の皆はその券を欲しいと思ってる。それをムダにするなんて許せない」
(ウィル、黙る)
チャッキー「俺はこう思ってる。毎日、お前を迎えに行き、酒を飲んでバカ話、それも楽しい。でも一番のスリルは、車を降りて、お前んちの玄関に行く10秒間。ノックしてもお前は出てこない。何の挨拶もなく、お前は消えてる。そうなればいい」
(ウィルは完全に黙ってしまう)

なぜなら、ただバカができる友達とだけしか思っていなかったのに、実はすごく自分のことを考えてくれていた友達だと知ったからだ。ウィルは、この期に及んでまだ自分のことしか考えていないと気づいた。自分は、自分以上のことを考えられない人間に呆然としてるんです。
そして、ウィルのために、ショーンとランボー教授が言い合うのを目撃し、あのスーパー涙が出るラストにつながる。
ウィルは、真の愛、友情、信頼を手に入れて、まだ頼りない勇気で走りだす、未熟な大人のメタファーであるオンボロ車で、愛する人のもとへ旅立った。

グッド・ウィル・ハンティングは、基本的な3幕構成で書かれています。勉強になるので、何度も復習するといいです。

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